音楽教育推進協議会助成グループ 千葉県山武グループ「里の秋」授業研究会 研究主題「伝えよう あふれる思い この感動」 題材名 日本の音楽を味わよう 授業校千葉県山武市立蓮沼小学校 授業者:川口聖子 |
平成19年度千葉県教育研究会音楽教育部会の開催に向けての授業研究会の取り組みの一つである。東金有料道路の松尾インターから出て、九十九里浜に向かって走ること約15分位で学校に着いた。当日は梅雨の時期にもかかわらず多少のムシムシ感はあっても晴天に恵まれた。途中、道の駅に立ち寄り海産物を数点買い、それから学校に向かった。駐車スペースには蓮沼小の先生が蒸し暑い中を案内をしてくださった。掃除中も終わりごろの様子。”こんにちは・・!!”と気軽に声をかけてくれた子ども達。応接室までに案内される僅かな間でもあちこちから爽やかな挨拶がたくさんありとても心地良い気分である。いよいよ授業。梅雨特有のムシムシ感の中での授業は子ども達も”大変だな・・・”と少し同情しながら音楽室に入った。しかし、大勢の会員の先生方もおられるのにとても涼しく、快適な空気を感じる。
それは、学校の上空が成田国際空港への離着コースに当たる為に、冷暖房完備であることも多少手伝ってはいるだろうが、それより、子ども達の明るさと笑顔に、ベテランの川口先生(授業者)の素敵な雰囲気がそう感じさせたのだろう。いよいよ授業がはじまる。どんな展開になるのか期待が膨らみます。 |
1、題材名 日本の音楽を味わおう 教 材 「春の海」 2、題材について 本題材は学習指導要領B鑑賞 (2)イ「・・・・・、筝や尺八を含めた我が国の音楽、諸外国に伝わ る音楽など、いろいろな種類の音楽」 及び鑑賞B(1)イ「主な旋律の対象、楽曲全体の構成、音楽 を特徴づけている要素と曲想との・・・・・・・」にかかわる。また、筝の音色のよさや奏法に親しませて いく。そして、更に発展させて、「「春の海」のイメージをもとに、「詩」(今回は金子みすずの「たいりょ う」)に「海」のイメージを筝を用いて「ふしづくり」や「様子をあらわす音づくり」として表現させたいと考 える。筝を用いた創作は学習指導要領A(4)ア「曲の構成を工夫し、簡単なリズムや旋律をつくって 表現する」に関連する。そして、「海」をイメージして自分たちでつくった作品と、宮城道雄の「春の海」 を聴き比べ、共通点や相違点に気付くことにより、音楽を深く味わう完成を育てる事をねらいとし、本 題材を設定した。(抜粋) 3,児童の実態と指導観 ・本学級は本年度に新しく編成させたクラス。男女の仲も大変良くクラスの団結力が高い。学級の落 ち着いた雰囲気はクラスの中で自分の居場所が確保され、児童の気持が安定しているというこで ある。よって合唱の声量も豊かであり伸びやかに歌うことができる。 ・幸いなことに蓮沼中学校に文化筝がある。この文化筝の特性を効果的に活用することで、平易に日 本の音階をはじめ、日本の音楽を即興的に味合うこともできる。そこで、実際に楽器に触れながら、 日本の伝統音楽特有の文化を感じることができればと願っている。 ・この6年生は中学年からリズムづくりや曲に合わせた振り付けなどの身体活動を多く取り入れてき た。 「つくって表現」の授業の一つとして、今回の授業では、筝を用して「詩」のイメージにあった「ふしず くり」や「「詩」のイメージに合った様子を表す音づくりに取り組んで生きたい。教材として「春の海」に 取り組むので「海」をイメージした「詩」として、金子みすずの「たいりょう」を活用したい。この詩のイメ ージをふくらめせ、自分たちでつくった音楽と宮城道雄がイメージしてつくった「春の海」を聴き比べ、 共通点や相違点を話し合うことでより深く音楽を聴き、味わうようにしていきたい。 |
川口先生の素敵な朗読「たいりょう」(小5国語「教育出版」に子ども達のイメージはドンドン膨らんでいきます。 |
詩の一説に節をつけて演奏する先生。〜ン 日本音楽の雰囲気だね・・・”。これならできそう・・・” |
文化筝で夢中になって”ふしづくり”しています。 ・曲の出だしは「六」か「七」の音から始め、最後は 「七」で終わること。 ・「ふし」づくりには、すぐ隣の糸に移動するとよい。 ・「続く感じ」と「終わる感じ」のフレーズはどこか、考 えて「ふし」づくりする。 ・気にいった「フシ」ができたら、糸番号を歌詞の上に 書き入れていくこと・・・。 など適切な助言がなされ、子ども達は夢中になって「ふし」づくりをしています。 |
”こんな節でどう・・・?いいね!!”とつい会員の先生方も仲間入りです。 途中に数回”詩のイメージ”に戻られながら、的確な助言で学習が深まっていきます。 終盤の幾つかのグループ発表では、めあてにそってそれぞれの「日本的なふし」がたくさんできました。 |
「つくって表現」への雑感 ・今回の授業は表現(4)「音楽をつくって表現できるようにする。」の内容。既にご承知の通り、これは平成元年の改訂で従来の創作を広意にしたもの。つまり、(4)にはア、簡単なリズムや旋律をつくって表現すること。イ、即興的に音を探して表現すること。の2つの目標がある。当時、この内容については教育課程説明会(地域によって名称の違いはあるだろうが・・?)から、移行期を経て、学校現場では積極的な取り組みがなされた。また、授業技術実践シリーズ7「つくって表現する」中島 寿著者(国土社)をはじめ、この種の参考本や事例がたくさんあった。公開研究会等に行くと何処でも「つくって表現」一色であったように思う。 ある時、”音づくり”の場面で教室中が騒音に近い状況を見た他教科の先生が、”これって音楽ですか・・・!!”と質問されたのを今でも鮮明に覚えている。 ”活動あって学習なし”と言われた一つに「つくって表現」がよく引き合いに出させたのも事実である。教授法で学ぶことが多かった教師にとって、「つくって」は結構厳しいものがあった。過去に頭声的発声が示され、弱声的発声?が流行った頃と同様思考錯誤の年月を費やしたことが懐かしい。つまり、極めて綿密な指導計画の積み重ねがあってこそ、創造的な活動につながることを経験からも学んだ。 今年度中に学習指導要領の改訂が発表されるとか。時数では、平成元年時の音楽科は小学校各学年70時間(1学年68時間)。今は周知のところ。また、基礎基本の一層の重視と「学力」が強調される今日。「つくって表現」が今回の改訂で話題になっているとも聞こえてくる。 川口先生の授業のようなきめ細かな指導の積み重ねにたってはじめて「つくって表現」のねらいに迫るものだと再認識した素晴らしい授業であった。 |