必携の一冊 新学習指導要領に対応した 小学校 鑑 賞 指 導 ガ イ ド ブ ッ ク 執筆者 川池 聰(かわいけ さとし) |
はじめに
新しい学習指導要領が平成20年3月に公示されました。今回、改訂された内容で鑑賞の指導にかかわる主なものとして考えられるのは、次のようなものです。
・「言葉で表す」という活動の在り方が示されたこと。
・{共通事項}という音楽の要となる事項が設けられたこと。
・我が国の音楽を教材とすることが、より一層求められたこと。
これらの内容を詳しく見てみると、今までの鑑賞の指導内容が変更になったというよりも、鑑賞の活動を通して子どもたちが身に付ける内容が、より明らかになったのではないかと考えられます。
つまり今まで、子どもたちが音楽を聴くことを楽しんだり、音楽のよさに気付いたりすることができるようにと、全国の先生がたが重ねてきたさまざまな努力は、そのまま生かされます。今回の改訂ではさらに、それらの積み重ねをベースにしながら、鑑賞の指導で子どもたちに身に付けさせたい学力の内容がより明確に示されたのだと、考えられるのではないでしょうか。
鑑賞の指導で最も大切なことは、音楽を味わって聴けるようにすることです。音楽を味わって聴くためには、次の3点がキーポイントになります。
@音楽を聴いて、自分なりに音楽全体の曲想を感じ取ること。
A感じ取った理由を、音楽を形づくっている要素を関連させて言えること。
Bその音楽を聴いて思ったことを、言葉で友達に招介できること。
子どもたちにとって、鑑賞の学習というものは、自分で考え、自分で発見し、それを他人へ伝えるという、主体的で創造的な楽しい音楽活動なのです。
本書を手がかりにして、子どもたちが歓声を上げて喜ぶ鑑賞の授業がたくさん生まれることを願っています。
Contents
1、鑑賞の大切さ
(1)音楽を鑑賞するということ
(2)すべての音楽活動の源
2、鑑賞の指導内容と「共通事項」
(1)鑑賞で指導する無いようとは
(2)ねらいをもって音楽を聴くことの重要性
3、音楽が「わかる」ようになる鑑賞指導の進め方
(1)音楽を聴いて、子どもたちが「わかる」ことは何か?
(2)「わかる」素地を育てる
(3)「わかる」ことをベースに音楽の価値で自分で判断しな
がら聴く
4、言語活動の充実と鑑賞指導
(1)想像したことや感じ取ったことを言葉で表すために
(2)音楽を聴いて言葉にする。
(3)主観的な感想を客観的な感想で橋渡しをする。
(4)言葉を扱うときの留意点
5、指導事例
(1)鑑賞で身に付けた内容を表現に生かす
〜「あいのあいさつ」と「ピチカートポルカ」を例に〜
(2)問いかけんも効果的なタイミングを考える
〜「トランペットふきの休日」を例に〜
(3)音楽情報の素材づくり(教材づくり)
〜「威風堂々 第1番」を例に〜
6、日本の音楽の取りあげ方
(1)低学年の事例
(2)中学年の事例
(3)高学年の事例
7、視聴覚資料の活用
(1)長所と短所を確認する
(2)音声のみを情報として活用する
(3)映像情報を活用する
あとがき
最近は、ヘッドフォンなどで音楽を聴いている人を多く見かけるようになりました。みんな自分が好きな音楽を聴いているのでしょう。おそらく世界中探しても、嫌な音楽を聴いている人は一人もいないはずです。
声を出して歌ったり、楽器を演奏したりすることが苦手な人でも、音楽を聴くことはできるはずです。音楽を聴くということは、誰もができる音楽活動であり、生涯にわたって、いつでもできる音楽とのかかわり方です。
自分から音楽を聴くという活動は、その美しいと感じる部分を自分の力で感じ取ったり、自分はこの音楽の何が好きなのかという判断をしたりして、その音楽に共感しながら音楽を聴いているということです。「音楽を鑑賞する」ということは、自分から音楽の価値判断をして音楽にかかわることなのです。
音楽の授業を通して、自分で感じ取り、自分で考え、自分で判断し、自分の言葉で伝えるという楽しさを、より多く体験した子どもたちは、生涯にわたって音楽に親しみ、より豊かな生活を送れるはずです。
先生がたの指導のよって、日本中の子どもたちが、音楽を聴くのが「楽しくて」「嬉しくて」「わくわくする」ようになることを心から願っています。
2010年3月 川池 聰
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定価525円
教育芸術社