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授業実践レポート

和太鼓の響きを満喫・汗を流しながら
―伝統音楽の基礎・基本を大事にしたー


【授業者】 
〒321-3423
栃木県芳賀郡市貝町塙4702
市貝町立市貝中学校  長山悦子先生

■ジジからのメッセージ■
久々に和太鼓の響きと汗を流しながら練習する先生・生徒の姿に感動した素晴らしい授業を見ることができました。音楽室は本校舎の別棟につくられ、地域の市貝武者太鼓保存会の方たちが毎週月曜日の夜の練習にも対応できるように工夫させている。音響面への配慮も充分にされた広い音楽堂。大太鼓・中太鼓・締太鼓(立奏用)締太鼓(座奏用)各6台に教壇に締太鼓(立奏用)1台の合計25台が用意され壮観だった。長山先生の終始笑顔の表情とさりげない言葉の中に伝統音楽の基礎基本を大事にした具体的な実践を通しながら指導されていた。
29名の生徒達の真剣な姿と何よりの長山先生が一番がんばっていたのが印象的でした。
その概要を紹介します。


第1学年音楽科学習指導案

期日   平成16年10月5日(火)5校時
場所   音楽室             
指導者 長山 悦子     


1.題材名 郷土の音楽を表現しよう


2.題材目標

(1) 郷土の音楽に興味・感心をもち、意欲的に表現したり鑑賞したりしようとする。(音楽への興味・感心・態度)
(2) さまざまな郷土音楽の特徴を感じ取り、和太鼓の表現の仕方を工夫しようとする。(音楽的な感受や表現の工夫)
(3) 日本の伝統的な和太鼓の奏法を学び、「市貝温泉太鼓」を演奏することができる。(表現の技能)
(4) 郷土の音楽を文化・歴史とかかわらせて聴くことができる。(鑑賞の能力)

2.指導にあたって

(1) 題材観(抜粋)
本題材では、我々の身近にある郷土の音楽の鑑賞や表現活動を通して、郷土の音楽の特徴を感じ取らせるとともに、和楽器の基礎的な奏法を体験させるのに適している。
教材として茂木町の河井獅子舞、芳賀町の星宮神社太々神楽、市貝町の田野辺の天祭、杉山太々神楽、また創作ものではあるが、二宮町の尊徳太鼓、芳賀町の浪漫太鼓、市貝町の武者太鼓を取り上げる。
市貝武者太鼓の「市貝温泉太鼓」は比較的平易な曲であり、生徒が和太鼓の体験をするのに適しているため、教材化を図った。市貝町に昔からある、「田野辺の天祭」や「杉山太々神楽」、「熊野神社大祭」など知る生徒は非常に少ない。しかし、「市貝音頭」は小学1年生の時から運動会で毎年踊ってきているため、全員がよく知っている。さらに「日光和楽踊り」については、赤羽小の「盆踊り」で踊っているため、赤羽小出身の生徒はよく知っている曲となっている。
また、和楽器というと「和太鼓」と答える生徒が多い。「和太鼓」は音楽棟に常備されていたり、様々な場面で市貝武者太鼓の演奏を聴いたりする機会があるため、身近に感じている生徒も多いと思われる。加えてこのクラスには現在も「市貝武者太鼓」に入っている生徒が2名、「田野辺の天祭」におけるお囃子で和太鼓を叩いた生徒が2名おり、1学年の中でも和太鼓経験が一番多いクラスである。

(2) 指導観(抜粋) 
中学校ではまず、芳賀郡内にどのような郷土の音楽があるのかを地図を用いて紹介する。1市5町の中から、4町の郷土の音楽を取り上げる。茂木町の河井獅子舞、芳賀町の星宮神社太々神楽、市貝町の田野辺の天祭、杉山太々神楽、また、創作ものではあるが、比較的歴史の浅い二宮町の尊徳太鼓、芳賀町の浪漫太鼓、市貝町の武者太鼓を取り上げる。
獅子舞、神楽、お囃子を取り上げることで、人々の普段の生活と直接結びついた民衆・民俗から起こった郷土の音楽についてその由来や歴史等を分かるようにし、人々の生活と音楽が一体となったものであることを分かるようにする。また、歴史は浅いが、それぞれの町で村おこし等を兼ねて地域発展のために創作した創作太鼓を紹介する。それぞれの町が、地域の活性化のために、その町の郷土芸能として今後も伝承していきたいとの目的をもって創作されたことを示し、古いものも、比較的新しいものも、みな地域にある音楽として、大切にしていこうという心情を育てたい。
そして本町にある比較的平易な曲「市貝温泉太鼓」についてわかるようにし、実際に和太鼓の表現をさせてみる。和太鼓の表現については、和太鼓を扱う基礎基本は大切にしたいが、正しい奏法を身に付けるまでの時間的なゆとりがないため、簡単に扱い、リズムに限定して指導を進める。
この授業を通して、地域にある音楽をずっと大切にしていくことや自分たちがこういったものを、また伝承していくという自覚をもてるように、また、和太鼓の演奏にも更に興味をもち将来的には継承から新たな伝統文化の創造につながればと期待したい。

●授業はじまりの前から
環境や条件は揃っているように感じる。町全体の雰囲気や学校を含めた環境づくりが自然になさせているように思う。アンケートからも市貝音頭は100%知っており、和楽器といえば79%が和太鼓をあげる。34%が和太鼓を演奏したことがあると答えた。
何よりの素晴らしいことは、長山先生がこの恵まれた環境を一歩踏み込んで教材化をはかり
様々な工夫や先生ご自身も技?を学び、積極的に授業実践をされたことにあると思います。

 


4.指導計画と評価計画(3時間扱い)

B:おおむね満足できる状況 A:十分満足できる状況やキーワード
ねらい 学習活動
【使用教材】
努力を要する生徒への指導の手だて 具体の評価規準(評価方法)
音楽への関心・意欲・態度(関) 音楽的な感受や表現の工夫(感) 表現の技能 (技) 鑑賞の能力 (鑑)
1

・郷土の音楽を文化
・歴史とかかわらせて聴き取ることができる

・各地域の郷土の音楽を鑑賞 し、特徴について話し合う
・市貝武者太鼓の歴史や背景を知る。
【ソーラン節】【市貝音頭】【田野辺の天祭】【杉山太々神楽【星宮神社太々神楽】
【河井獅子舞】【二宮尊徳太鼓】【芳賀浪漫太鼓】【市貝武者太鼓】
・どんな楽器が使われて いるか問いかける。
・ワークシートに分かったことなど書くよう促す。
鑑B 郷土の音楽を文化・歴史とかかわらせて聴き取っている。(発言観察・ワークシート)
A 郷土の音楽を文化・歴史とかかわらせて、よさや美しさも聴き取っている。
関B各地域の郷土の音楽に関心をもって聴いている。 (発言観察・ワークシート)
2 ・和楽器に興味をもち、「市 温泉太鼓を演奏することが できる。 ・和太鼓の基礎的な奏法を身に付ける。
・「市貝温泉太鼓」をリズムをそろえて演奏する。【市貝温泉太鼓】
・つまづいている生徒に個別に指導する。
・友達同士で教え合い演奏するよう促す。
技B 和太鼓の基本的な奏法を身に付け、演奏している。(演奏聴取)
A 和太鼓の基本的な奏法を身に付け、リズムをそろえて演奏している。
3 ・「市貝温 泉太鼓」を工夫して表現することができる。 ・和太鼓の奏法について工夫する。
・和太鼓の種類を変えて演奏する。【市貝温泉太鼓】
・拍子をとってテンポが分かるようにする。 感B 強弱や速度など変化をもたせて演奏している。
A 強弱や速度など効果的に表現し演奏をよりよいものにしようとしている。

●めあてをつかむ。
真剣な眼差しから今までの授業の綿密な積み重ねが感じられます。
 

(5)本時の指導(2/3本時)
@目標
・和太鼓に興味をもち、意欲をもって表現しようとする。
(音楽への関心・意欲・態度)
・和太鼓の基礎的奏法を身に付け、「市貝温泉太鼓」を演奏することができる。
(表現の技能)
A授業の視点
・教材・教具の工夫
・ 教材化した「市貝温泉太鼓」の楽譜を使用する。
・楽譜やリズムがわかりやすくなるよう、黒板に大きく掲示する。
・市貝町の武者太鼓保存会の和太鼓(音楽棟に常備)を借用する。


学習活動 時間 教師の働きかけ 評価規準 (評価方法) 資料・準備
1.本時のめあてを 知る。 2 ・本時の授業について確認する。 和太鼓楽譜・ばち提示用楽譜
本時のめあて「市貝温泉太鼓」を演奏しよう。
2.「市貝温泉太鼓」の模範演奏を聴く 5 ※市貝武者太鼓のメンバーによる模範演奏を聴き、意欲をもって演奏でき るよう支援する。 和太鼓
3.和太鼓の特性を知り、いろいろなリズムや強さで叩く。 (1)正しい姿勢
(2)太鼓の特性
(3)いろいろなリズム
(4)乱打・ソロ打ち
20

・学習の約束事の確認をする。
※正しい姿勢や和太鼓の特性を説明し、いい姿勢で力強く叩くよう促す。
◎Aさんに正しい姿勢や叩き方など見本として叩かせ、活躍できるよう支 援する。
※「市貝温泉太鼓」に出てくるいろいろなリズムや乱打・ソロ打ちなどを教え和太鼓の楽しさを味わわせる。※かけ声を積極的に出すよう促す。
◇難しいリズムの所は友達と協力してリズム練習するよう促す。
◇Bさんには個別に丁寧に指導し、途中まででもできたらほめるなどして支援する。
※同じ種類の和太鼓同士、リズムがそろうよう支援する。

・和太鼓に興味 をもち、意欲 をもって叩こ うとしているか。(観察)
・基礎的奏法を 身につけることができたか (観察)
譜面台
4.「市貝温泉太鼓」を全員で合わせる 15 ・曲を前半と後半に分けて練習し、楽譜の進み方が分かるよう配慮する。
※曲を全部通し、全員で合奏することの楽しさを味わわせる。
3 ・次時はいろいろな変化を加えて演奏することを確認する。 ・美しい音色を 工夫して「市貝温泉太鼓」 を表現することができたか(観察・ワークシート) ワークシート
5.次時の確認をする。


● ポーズが決まっています。
2人の生徒(保存会メンバー)と先生(保存会の方に指導を受けたとか)での模範演奏。
長山先生が靴下をぬぎ裸足になり鉢をにぎる。2人の生徒も太鼓の前に真剣な顔で立った瞬間。3人の雰囲気から感じられる緊張感が音楽室を走った。シーン・・・・。
 


● 姿勢、握り方、構え方、心構え・・・
模範演奏をはじめ、姿勢、握り方、構え方等を軽妙な語り口でポイントを押えていく。
 


● おわりに
伝統音楽を通して何を学ばせるか!。
和楽器を用いれば日本の伝統的な音楽の良さがわかるか・・・・。和楽器の指導を通して子ども達に何を感じ取らせ、何を身につけ、どのような人間に育ってほしいか・・。を指導者自身がはっきり持つことが重要とジジは考える。作法のない剣道はだたの喧嘩。型のない茶道はただのお茶・・・・。
その意味からの今回の長山先生の授業では伝統音楽を扱う真髄ともいえる精神性のようなものをさりげない口調で自然に指導しておられた。また、それを受け止めて汗を流しながら真剣に取り組んでいる生徒達がとっても素晴らしい。
授業の最後の長山先生の一言"和太鼓おもしろかった・・。もっとやってみたい人は毎週が月曜日にこの音楽室で武者太鼓保存会の人たちが練習しているからいってみたら・・・。
                          
音楽教育推進協議会"関東甲信越21世紀の会"研究助成から