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■ ゼロ0からのスタート〜吹奏楽から管弦楽への移行〜■


"織戸流・オーケストラの実践指導事例集"

■紹介校
千葉県習志野市立第六中学校  管弦楽部
校長 木村武光  顧問 織戸弘和
千葉県習志野市屋敷2−17−7

■ジジからのメッセージ              
今回は、今年度転勤してもうすぐ1年を過ぎようとしている織戸弘和先生を紹介します。先生は前任校(千葉県習志野市立第一中学校)で管弦楽部を指導させていました。各種コンクールで全国優勝に度々導いた実績の持ち主です。
その織戸先生が今回の異動で吹奏楽から管弦楽へ移行はじめて3〜4年目の学校に着任しました。そこでのチョット苦労している話とその解決のための"織戸流の実践記録"を紹介します。
なお、今回の紹介は今後機会をみてまた、紹介してみたいと思います。

平成6年東邦音楽大学音楽学科卒。加古勉氏にトランペットを師事。平成9年度習志野市立第一中学校に赴任する。管弦楽部の顧問となり、全国学校合奏コンク−ルやTBSこども音楽コンク−ルにて、最優秀賞、文部科学大臣奨励賞を受賞する。

 

1、六中管弦楽部との出会い(4月)
〜 はじめての合奏 "エッ!弦のおとが・・"〜


指揮台のスコア
ただ今!練習中
定期演奏会の招待状

昨年の3月31日、6年間お世話になった第一中学校で、盛大に離任式を開いていただきました。いろんな方々から声をかけてもらい、「大切にされていたんだなあ」と改めて感じ入りました。ありがとうございました。次の日は、六中への初出勤と成るのですが、初めての異動となるので、とにかく失敗しないように緊張していました。
次の日4月1日は、職員会議前に前任の音楽の先生から、六中の部員達に紹介されました。音楽室に入ってみると、元気な挨拶の声で良かった!歓迎されていると思い、ホッとしたのもつかの間、実は今度の日曜日には、(そう、着任式前の日曜日!)地域のお祭り演奏が入っているのです。全校の顔合わせの前に演奏ってすごいよなあと思いつつ、さっそく「天空の城ラピュタ」の合奏を始めました。と音が聴こえない。というか楽器が響いていない。鳴っていない。管楽器は、まだ良いとしても弦楽器の存在が…、無い。
実はこの第六中学校は、ここ3〜4年を境に吹奏楽から管弦楽に編成が移行した中学校で、当然、前任校のように、良い楽器があるわけでもなく、楽器の本数も足りない。ましてや学区の小学校に谷津小のような超メジャ−な管弦楽クラブがあるわけでもない。ということは、今弦楽器を弾いている人たちは、1〜2年の楽器経験しかなく、といってレッスンについているわけでも当然無いので、楽器の響かせ方が分からないとのことでした。
前任校では、マ−ラ−やブルックナ−、ブラ−ムス、R・シュトラウスなど好きな曲の楽譜を「ハイ!」と渡し、うまくいけば1〜2週間で曲が仕上がってしまうので、管弦楽部ってすぐ上手になるなあなんて思っていました。とりあえず、一番危ない曲を「また、今度やろうね。」と言い取り下げ、「鉄腕アトム」「天空の城ラピュタ」「川の流れのように」の三曲に絞ってもらいました。野外での演奏ということもあったので、どの楽器も、とにかく楽器を鳴らす感覚をつかんでもらうことに専念しました。しかし、一番の問題はコントラバスが、一人しかいないこと。

〜低音補強にエレキベース〜
良い合奏の条件の一つには、低音がしっかりと響いて逆ピラミッド型のサウンドになると良いというのがあります。低音が一人では(テュ−バはいません。)しょうがないので、知り合いに頼み、エレキべ−スを借りてきました。使用した方ならわかると思いますが、コントラバス奏者はエレキべ−スへの持ち替えが、わりとスム−ズにいくのです。とは言ってもちょっと苦労していましたが。この本番用の練習をしていく中で、気がついたことはこの六中の生徒はスポンジに水を含ませるかごとくの吸収力を発揮し、しかも練習の努力を惜しまないことです。たぶん部活動の顧問をやっている方なら、とってもうれしい状況だと思います。今現在でもその姿勢は貫かれているので、とても感心しています。

2、楽器のこと
〜まずは楽器調査から〜 
・楽器置き場
4月の中旬に差し掛かり、まとめて時間を取れる時があったので、六中管弦楽部の全ての楽器調査をおこないました。近隣の高校からヴァイオリンを7台頂き、楽器数はそろったのですが、修理が必要な楽器がたくさんあることがわかってきたからです。さっそく、楽器屋さんにみていただきました。すると…。使い切り商品続出(要は修理不能)で、壊れていないものが無いぐらい修理が必要で、楽器屋さんいわく「中学校では千葉県一」修理が必要な学校の内の一つとのことでした。修理費用は見積もりで出して頂いたのですが、かなりの額です。普通の吹奏楽部一年分の予算ぐらいだと思います。直してもそれぞれの楽器の大まかな値段は、ヤマハでいえばカレッジモデル、弦楽器でいえば、通信販売のヴァイオリンセット(ビデオ付き)ぐらいというものですが…。値段の高いヴァイオリン、チェロ、ヴィオラや五弦コントラバス、管楽器は最低ヤマハカスタムクラスの楽器を使っていたころが懐かしい!
 とはいっても、この勢力で頑張るしかないので、学校の修理費でどうにかしてもらおうと事務の先生や教頭先生に相談させていただきました。でも、足りない。これは部費の値上げしかない。
3、恵まれた応援
 〜頑張るしかない!〜
・譜読みも大変です。
管弦楽部に限らず器楽系音楽部活は、お金がかかる部活動だと言えます。簡単に部費を上げようといっても、そんなに簡単に物事が運ぶことはありえないと思います。でも、お金によって楽器がしっかりしていけば、生徒が頑張った分だけ練習の努力は報われる。それでも、学校にお金はたくさん無い。そこで、5月の部活動見学会のときに保護者の方々に@全楽器の状況 A足りない金額についての説明 B近隣学校の部費額と六中の部費額との差などを書いた資料、(当然それ以外にも部活動の方針や練習活動、夏休みの練習日程などサ−ビスに努めます。)をお配りし、当時500円の部費を、びっくり倍額の1000円にしていただきました。やはり保護者の皆様の協力は大です。さらに、昨年度は3人の顧問がいらっしゃり、引率や楽器運搬などの仕事を分担されていたのですが、今年度から2人になりました。分担しても、仕事がある状況ですので、休日の生徒引率や、会計、会計監査までしていただくことになり本当に助かりました。なかなか一年目でここまで協力体制が整うことはないと思います。第六中学校管弦楽部の発展にとって、ものすごく幸せな状況があるといえるとおもいます。
4、技術の習得について
〜まずは楽器の修理から〜
当時、技術面で六中に必要だったのは楽器の修理を進めること(出来れば新品に)と、テクニックをつけることです。楽器の修理に関しては、楽器屋さんに故障個所を調べてもらってから、すぐに修理を依頼し、弦楽器ですと、表板や裏板のはがれ、コマの交換、指板の曲がりの調整など、管楽器であれば、ハンダで止っていない個所、相当なへこみ箇所、タンポが閉まらない箇所などを正常な状態にしていただきました。戻ってきた楽器は、見違えるようにきれいな音が鳴り、(特に弦楽器はサ−ビスで板の磨きまでしていただいたので新品同様に見えた。)突然音の響くオ−ケストラに変わりびっくりしました。やはり、楽器の手入れや、扱い・管理は大切なんだなあと痛切に感じました。直してもらってからは、何か故障や注文、困ったことがあったら、すぐ楽器屋さんに来てもらい、無理な注文にも応えていただいておりますので、とても感謝しています。

〜サポーター探し(保護者、友人、飲み友達、楽器屋さん、師匠まで・・・)〜
技術の習得に関してですが、私はトランペットで音楽大学を卒業したので、それ以外の専門的な知識はありません。しかも、中学校教員はいろいろな仕事をしているので、放課後の指導が満足に出来ないことがあるのは、皆さんご存知のとおりです。技術向上の究極の方法は、毎日講師の先生を呼び丁寧にレッスンしていただくことですが、それは絶対に無理なので、六中の場合は少しでもその状況に近づくことができるように、部活の保護者や私の楽器関係の友人、大学の卒業生やその知り合い、音楽室を練習場に使ってもらっている一般の吹奏楽団体の団員、自分の学校に来た教育実習生や、飲み仲間、はたまた自分の師匠など、本当にありとあらゆる伝手を頼って、だいたいの楽器ごとの講師体制を整えました。申し訳ないのはレッスン代が払えないので、お昼ご飯代や、無料で何とか引き受けさせてしまったことです。懐具合は寒くなりますが、生徒がレッスンを真剣に受けて、目を輝かせて講師の先生方にお礼を言っている姿を見ると、うれしくなります。そして、講師の先生方に教わることが出来、少しずつですが着実に腕前を上げているように見えます。個人技術が向上していけば、アンサンブルやソロの校内発表会のための練習も、顧問がつかなくてもある程度のところまでは、生徒で出来るようになっていきます。

・頑張っています
5、管弦楽部の魅力と課題について
〜私の指導法〜
 私自身は、学生のときから吹奏楽で育ってきましたので、教員になって管弦楽をやるとは思ってもいませんでした。まだ管弦楽部7年目なので、いろいろ教えていただきたいことがたくさんあるのですが、それでも「管弦楽の魅力とは何か?」いうと、べ−ト−ヴェンやブラ−ムス、モ−ツァルトなどのクラシックの名曲が、オリジナルの編成で出来るということでしょうか。それと、人数や力量も必要になりますが、ブルックナ−やマーラーなどが作曲した管弦楽の最高難度の曲を演奏できたことも、私にとっては良かったことだと思います。又、「スターウォーズ」や「ジュラシックパーク」「ロードオブザリングス」「タイタニック」などの映画音楽は、吹奏楽以上に感動性のある曲に仕上がります。
 管弦楽でやっていくためには、クリアしなければいけない課題も多いと思います。一つは、「弦楽器を教えきれない」という部分。これは、吹奏楽の先生方からお聞きすることなのですが、私も管弦楽を始める前はそう思っていました。経験してみると、弦楽器の方が管楽器より指導しやすい面が多いです。基礎的な部分に関しては講師の先生方にみていただいてますが、そこがクリアできれば、「上手な子の弾き方をまねしてごらん。」と言うだけでも間違いなく上達します。そしてこれが大切ですが、音程感をつけるために個人ごとにチェックをします。初心者には、正確な音程感を身につけることが難しいので、指板にはポジションごとのシールを張ってあげれば、その日から演奏に参加できます。管楽器は、音を出すまでが大変ですが、弦楽器はその日から音が出せるのです。チュ−ニングは当然チュ−ナ−を使います。楽譜は、弦楽器はダウンとアップが記入されている楽譜を使うと初見でも演奏できるようになるので、あらかじめ記入するか。記入されている楽譜を買ったり、借りたりという準備が必要です。ある程度音程をつかむことが出来るようになると、弓を持っている右手の動きの方が難しくなりますので、講師の先生に教えてもらいます。
 
〜合奏教本があれば・・・〜

二つ目に吹奏楽の「トレジャリーオブスケールズ」「ティップス」「3D」などのような機能的で効果的で便利な合奏教本が、無いという事です。(探せばあるのかもしれませんが…)吹奏楽の分野におけるこのような教本の存在は素晴らしくて、演奏技術の向上につながっていると思います。吹奏楽では、必ず合奏の前に合奏教本を使い、ウオーミングアップをしてから練習曲に取り組む。というスタイルが当たり前だと思うのですが、それがありません。いきなり、曲を始めるのです。プロオケであれば当たり前ですが、アマチュアには絶対良質な合奏教本が必要だと思います。そのような意味において、管弦楽の合奏指導は吹奏楽に比べて多少遅れている部分があると思っています。
 
〜身近な楽譜がほしい(ハロー ミユジックやシベリウスUを頼りにしています)〜

三つ目に楽譜の問題です。クラシックの王道の曲は、楽譜がたくさん世の中に出回っているので良いのですが、はっきり言って、中学生が演奏したがる流行曲を演奏することは難しいです。コンサートのプログラミングも軽い曲を中心に演奏したいというときは、困ります。でも演奏したいので、「ミュージックエイト」社の吹奏楽の楽譜を工夫して使っています。管打楽器はそのまま、弦楽器はサキソフォーンを振り分ければ、あっという間に曲になります。ご老人向けに演歌なども使えば、泣くほど喜ばれます。また、アニメのジブリ作品の曲は簡単でしかも効果的な楽譜が出版されています。「君を乗せて」などは、吹奏楽より美しく演奏できます。しかも初見レベルぐらいの簡単さです。更にアメリカの楽譜出版社は、ポップスの曲や映画音楽をたくさん出版している会社がたくさんあるので、そちらから取り寄せれば、OKです。英語が苦手な人は、先ほどの「ミュージックエイト」社で、海外のオーケストラ曲を発注してもらえます。多少手数料がかかりますが安いと思います。惜しいのは、吹奏楽の「ニュ−サウンズインブラス」などでポップス曲の素晴らしいアレンジを聴き慣れている耳には、「もうちょっと凝ったアレンジにしてほしいなあ」と感じてしまうことです。でもあとは、自分でアレンジするぐらいしかありませんので、早く日本でも素晴らしいアレンジの楽譜が出てきてくれるといいなあと思います。儲からないでしょうが。
良い楽譜があったら是非教えてください。私の場合は、「シベリウスU」と「ハローミュージック」を楽譜の浄書に使っていますので、データ−交換も出来ますので、よろしくお願いします。