川崎市教育委員会[特色ある学校づくり]研究推進校
[芸術総合」の取り組み
テーマは<平和>そして<こころ
音楽と巨大壁画プロジェクト「キッズ・ゲルニカ」の融合
第 2 弾

   ■実践校■   川崎市立向丘中学校
   ■校  長■   操   雅子

ジジからのメッセージ
 昨年、下記の2つのテーマについての実践を”ジジの音楽教育情報”で紹介しました。その第2弾が3月5日に芸術総合発表会として、操  校長を中心に550名の生徒と先生方が一丸となって取り組まれた実践報告が行なわれました。
多感な中学生の心情と向丘中学校の教育理念が見事に一致した内容でした。概要しか紹介できませんが、2年間にわたる綿密な積み重ねを感じる感動的な内容でした
今回の報告は、芸術総合の基本的な考え方と当日の概要をお知らせします。


私の授業から
一年生の指導が勝負・変声期にめげない・音をとれない子をつくらい
”月2〜3回の指導でも”

[総合芸術」の取り組み
「芸術総合」<平和>をテーマに
音楽と巨大壁画プロジェクト「キッズ・ゲルニカ」の融合



これから感動のドラマがはじまります 大型ストーブが活躍したリハーサル チラシ(昨年の発表の風景)


■芸術総合発表会について■
 
美術と音楽のコラボレーションによってテーマを追求する総合的な学習の時間の活動を、本校では、[芸術総合」と位置づけて昨年度から学習してきました。[平和」 と 「こころ」をテーマとして、全校生徒550名が一年をかケ手、合唱活動に取り組むと同時に、大きなキャンパスにゲルニカサイズの絵画を描き上げました。本年度の発表では、全校合唱も取り入れて1年間の活動を発表いたします。
 なお昨年度作成の絵画作品は、キッズゲルニカ国際子ども平和絵画プロジェクトに出品し、今年8月にインドネシアのバリ島で開催される展覧会で公開される予定となりました。

■Educastion through the art

 わが校で取り組み始めた[芸術総合学習」の具体的な活動は、音楽科の全校合唱と美術科の国際子ども巨大プロジェクト「キッズ・ゲルニカ」への参加である。それぞれの取り組みは、ともに共同で活動し、共同で制作するものである。全体で一つの作品を取り上げていくわけだが、そこには生徒個々の育みという視点で学習のねらいを見据えている。そして必修教科での取り組みとは違い、音楽、美術の芸術教科の創造への取り組みを学習の目標にするだけでなく、それぞれの活動を通して、いろいろな問題意識や価値観に触れ、自分とは違った視点や考え方を味わうことことから、子どもたちに自ら学ぶべきことは何かといった学習の目標意識をもたせようとしたものである。
「芸術活動を通した教育を目指す、Educastion through the art」の考え方を基盤としている。
そのため、音楽、美術の教師が授業を行なうだけでなく、合唱では歌詞にある意味の把握や、その歌の生まれた背景は作者の思いから、人としてあるべき姿を模索する授業を各担任の先生方にお願いすることとしました。
また、キッズ・ゲルニカのプロジェクトでは活動の意味や世界の現状認識など、各教科での指導の立場でも同じように掘り下げてきた。


■芸術総合の活動テーマ■
 
バックボーンとなる、一貫したテーマは「こころ」とした。
 平和の中で育ち危機感に乏しい日本社会で、平和という概念を中学生が真正面からとらえることは容易なことではない。子どもたちが目にする戦争行為の報道をみても、現地の一般市民が感じている苦難を実感させるものがあるのかも疑問におもわざるを得ない。平和の真っ只中で、平和な社会を願う学習とはどうあるべきか。
 子ども達には見えにくい戦争に対する平和という概念ではなく、世界中の人に発信するための平和のメッセージであったり、人が生活する上で集団の中ででの平和な生き方、平和に生きることのできる環境問題,自己を肯定的に見据え、自分とは違った価値観をもつ異文化に対する理解力などであったり、大きな意味での平和な生き方そのものを深めようとする活動を目標とした。
 そしてテーマを「こころ」としたのは、昨今の子どもたちが、家庭や学校をはじめ友人関係において大変難しい環境の中で生活している場合が多いたである。そこで他人と関わること、集団や社会に関わること、自分自身に関わること、自然や崇高なものに関わることなど、この学習を通して自分の心のあり方について問題意識をもってより深く考えることができる子どもであって欲しいという願いから、担任の先生中心にそれぞれ
立場で授業の初めに、15分程度の話題を提供してもらい、それをもとに話し合い活動も展開した。

■活動内容■

○音楽的アプローチ・・・・・・・チームごとの合唱を通して前項合唱を作り上げる。
○美術的アポローチ・・・・・・・キッズ・ゲルニカ *国際子ども巨大壁画プロジェクト参加

*キッズ・ゲルニカ
 
「キッズ・ゲルニカプロジェクト」とは、ゲルニカというスペインの小さな村が無差別爆撃をうけたことに抗議したピカソの大作「ゲルニカ」にちなみ,作品と同じ大きさ「縦3m50cm × 横7m80cm」の絵を描き、平和を訴えたり平和について考えていく活動である。世界中のいろいろな国の子度も立ちを中心にした団体が参加し、世界各国で展覧会を開催している。
 昨年度の本校作品は、今年8月にインドネシアのバリ島で開催される展覧会に展示される予定となっている。また、デジタル展示会がインターネット上で常時開催されている。


■芸術総合の目標

@活動のテーマの中から、具体的な自分のイメージを持ち、表現活動の中なら自分の 心の豊かさにつ なげる。

A共同で行なう活動を通して社会性を育み、集団の中での自分の存在感を肯定的に 見つめられる力を 育む。

B自らの活動に目的意識を持ち達成感を味わうことで、自己の課題意識として認識で きる素地を培う。



m

「エルガーの大聖堂への行進でお迎え 魅了されている先生方 見事なアンサンブル



年間指導計画 ■

学 習 目 標 音楽の活動からのアプローチ 美術の活動からのアプローチ



















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活動内容を考える


いろいろな考え方
に触れる

自分自身の受け止め
方を模索する


自分の学習目標を探る








学習課題を深く追求する









発表に向けたまとめや自己評価
を行う

1・2年生で活動を引き継ぎ、
課題意識を深める


自己の活動の可能性を肯定的
振り返る



自分たちの発表を演出する
・オリエンテーション
・リコーダー(コンサートマスター、
 伴奏者、パートリーダ―)
・全校合唱曲選定・練習


・チーム曲鑑賞
・チーム曲練習〔音取り)


・担当の先生からの感想
・パート別練習(リーダー中心



・チーム曲の音取り確認・練習



・歌詞の意味やことばの抑揚を考え
 た表現の工夫



・担当の先生からの授業・感想
 意見など(歌詞の持つ意味や内容につ
 いて)


・曲の仕上げ
・自己評価

・リーダーの選出・育成
・卒業式の合唱曲の練習


・チーム曲の練習
 発表にむけての準備
 自己評価


・演奏発表
・オリエンテーション
・リーダーの選出


・自分に目を向ける
・違った考え方について
・「こころ」を考える.各担任の先生
 方の授業
・「こころ」を訴える下書きの制作)


・下絵の鑑賞会
・チームでの下絵決定鑑賞会


・原画の下絵制作
・着彩


・先生の評価といろいろな視点での
 授業評価




・活動を振り返る
・今後の可能性を探る
・自己評価を行う

・1・2年生での組織再編成
 を行う
・学習の目標を確認
・完成に向けて活動計画
 を見直す
・鑑賞会を行う
・発表の計画を立てる
・活動を振り返り、課題意識
 を持つ



生徒の学習の様子


合唱活動については、通常の音楽の授業の中で、合唱の音取りなどシステム化されたものがあるため、普段交流が少ない他学年との交流でも大きな問題はなく、反対に上級生が下級生によい影響をたくさん与えてくれた。
   ・上級生との活動について1年生の感想

 「芸術総合の時間では、先輩たちとたくさん関わってきました。先輩たちはいつもやさしく親切にしてく
 れました。2年生になったらやさしい先輩でありたいです。」(1年女子)

 また、テーマの「こころ」 [平和」にいて、各担任の先生から様々な話をしてもらった。「シエラレオネ」という国を題材に命や生きることについての話、不良少年から教師という職についた実在の人物を題材に感受性や心の変化についての話、心理テストを使用して生徒の興味をひき自分自身を考えさせたもの、自分自身の体験談から生命の尊さと人に対する思いなど各方面からの「こころ」や「平和」についての話を聞いた。そのことが生徒たちの感受性に多いに影響し、歌の内容面を考える上でも自分のものとしてとらえ、その結果、主体化して表現することができた。


組チーム 
ゲルニカテーマ「湧きおこる芽」

光の中に芽生える、希望、愛、平和
生きること・・・・
昼休み合唱団
指揮  操  校長さん
3組チーム
ゲルニカテーマ「命のぬくもり」
ゆれ動く心の一喜一優。闇から光へ
「こころ」が移りゆくその瞬間


■プログラム■
 
 1、吹奏楽部演奏 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「エルザの大聖堂への行列」
 2、全校合奏 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「カヴァレリア ルシティカーナ」
 3、4組チーム発表 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ゲルニカ 「湧きおこる芽」  合唱「together」
 4、3組チーム発表 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ゲルニカ 「命のぬくもり」  合唱「今、瞳をとじて」
 5、1組チーム発表 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ゲルニカ 「手と手」      合唱「今の僕には」
 6、映像・打楽器演奏 ・・・・・・・・・・ 演奏:吹奏楽部パーカッションパート
 7、5組チーム発表 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ゲルニカ 「つかまえる」 合唱「青春の1ページ」
 8、2組チーム発表 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ゲルニカ [映る」     合唱『思い出胸に」
 9、全校合唱 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 合唱「予感」
10、昼休み合唱団 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・合唱「地球に寄り添って〜センスオブワンダー〜」
11、全校合奏 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「カヴァレリア ルスティカーナ」



1組チーム
ゲルニカテーマ「手と手」

平和を求め、現実を変える意志
もちたい!」
5組チーム
ゲルニカテーマ「つかまえる」

新しく生まれる命、奪われる命。
それが今の地球。
2組チーム
ゲルニカテー「映る鏡」

私たちの中にある二つの「こころ」
真実の「こころ」は鏡の中に・・・。


今年度芸術総合合唱曲



チーム  
 曲   名
作詞者 作曲者
全校合唱 予 感 片岡 輝 大熊 崇子
1組チーム 今の僕には 加藤 正彦 松井 孝夫
2組チーム 思い出胸に 小俣 岳 松井 孝夫
3組チーム 今、瞳をとじて 清水 宏美 清水 宏美
滝口亮介(編)
4組チーム Together 山崎 朋子 山崎 朋子
5組チーム 青春の1ページ 金沢 智恵子 橋本 祥路